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読了:世界推理短編傑作集6, 戸川安宣/編 [読書日記]

* 世界推理短編傑作集6, 戸川安宣/編, 東京創元社, 9784488100124

タイトル通り、世界の(といっても欧米に限るが)推理短編小説のアンソロジーである。
前書きその他に何回も書いてあるが、かの江戸川乱歩が編んだ同名のアンソロジーが1~5まで(創元推理に)存在していて、それを補完する6を出版したというもの。なんともマニアックな話である(それを買うほうもマニアックな者だということ)。

読み終わっての感想は、、、再読ものもあったけど、ひととおり舐めるつもりで読んでおいてよかったなというもの。超有名な逸品(ケメルマンとか)も収録されているし、トリックだけ超有名な某作品(別のアンソロジーで読了済み)も収録されているので、これを手に取るような擦れた読者は再読作品も多いのが普通かもしれない。といっても自分の場合、ふつうなら手に取らないよなあという様相のものもあったりするので、こういうアンソロジーだからこそ読めたんだよなということになる。

1~5と同じように、息が長く売れ続けると一読者としてはありがたい。
そう思って書棚を見たら、自分の蔵書は「世界短編傑作集」の1~5で、「世界推理短編傑作集」の1~5というのはこれをもとに2018年に整理しなおして改版したもののようだ。追加収録はポオやドイルあたりのメジャーどころらしいので、まあさすがに買いなおさなくてよいかなとは思っているところ。

世界推理短編傑作集6 (創元推理文庫 M ン 1-6)


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読了:ビブリア古書堂の事件手帖7 栞子さんと果てない舞台, 三上延 [読書日記]

* ビブリア古書堂の事件手帖7 栞子さんと果てない舞台, 三上延, アスキー・メディアワークス, 9784048926409

ビブリアシリーズ第7弾にして、最終話(?)である。5年ほど積読だったのを読了。
これまで国内作家の古書を扱っていたシリーズも第7弾ではシェイクスピアもの。前作の流れでかなり人間関係がややこしくなり、人物相関図が扉に挿入されてしまう事態である。人々の行動原理もだいぶ常軌を逸しつつある気もする。
とはいえ、続編がどういう設定ででているのを書店で見て知ってしまっているので、二人が最後にどうなるのかは目算がついて読んでいたり。

さて新キャラクターとして、いかにもという感じの悪役が登場。なんとなく典型的な結末を予想しつつも、あまりにひどすぎる悪役ぶりを流れのままに堪能していく。

最後のトリックは、直前の伏線でだいたい分かってしまったのだが、でも期待していた物理的説明がなかった(比○は同じはずで、ぴったりなのに?)のが腑に落ちないのだが、まあ本格ミステリではないのでそこは良いのでしょう。

(関係ないですが、大船の名店「観音食堂」が全焼してしまったのが個人的にショックです。結局1度しか食事していなかった…。)

ビブリア古書堂の事件手帖7 ~栞子さんと果てない舞台~ (メディアワークス文庫)


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読了:ビブリア古書堂の事件手帖6 栞子さんと巡るさだめ, 三上延 [読書日記]

* ビブリア古書堂の事件手帖6 栞子さんと巡るさだめ, 三上延, アスキー・メディアワークス, 9784048691895

ビブリアシリーズ第6弾である。なんと8年ほど積読だったのを読了。
登場人物や、彼らにまつわる事情などはおおむね記憶しているのだが、ちょっと細かい事件のあれこれをだいぶ忘れている気がしたのだが、本書の冒頭でうまいこと説明文が加えられていて助かった。もし前作を読み飛ばしてしまっていてもOK、という心遣いでしょうか。

本作では、太宰治の稀覯本が登場。どう「稀覯」なのかわからずに皆が血眼になってそれを探す、という、一種独特の世界を垣間見つつ、これまでよりさらに輪をかけてややこしくなっていく人間関係を解きほぐしたりもつれさせたりするのを、ひたすら著者の手のひらの上で流れに沿って読んでいく、というこれまで通りの展開である。

シリーズ当初はご当地もの青春ミステリなのかと思っていたのですが、ご当地はともかく、どんどんドロドロになっていくストーリ。果たしてあと1作で着地できるのでしょうか?

ビブリア古書堂の事件手帖 (6) ~栞子さんと巡るさだめ~ (メディアワークス文庫)


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読了:カナダ金貨の謎, 有栖川有栖 [読書日記]

* カナダ金貨の謎, 有栖川有栖, 講談社, 9784065238233

有栖川有栖の国名シリーズ短編集である。小説家・アリス&火村探偵もの。
5編が収録されているが、うち2編は超短編という格好だ。ぜんぶを構えて読んでいると肩透かしを食う。

ともあれ火村節は健在。超ストレートな謎解きものがあるかと思えば、えぇーそういう動機ってありうるのかみたいは話(いや、でも近年ならありえそうな話な気がしてきた)、などなど。

個人的には、冒頭のつかみもふくめて「トロッコの行方」が好み。ミステリ小説にトロッコ問題なんて持ち出してどうするんだと思っていたら、、、という展開が楽しい。ただし結末は、なんというか身につまされる、悲しいお話ではあるのですが。

カナダ金貨の謎 (講談社文庫)


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読了:歴史のダイヤグラム 鉄道で見る日本近現代史, 原武史 [読書日記]

* 歴史のダイヤグラム 鉄道で見る日本近現代史, 原武史, 朝日新聞出版, 9784022951397

タイトル通り、日本近代史のいくつかのトピックスを鉄道という切り口で切り取ったエッセー本である。もともと朝日新聞の週刊のコラム欄に掲載されたものを編集しなおしたという体裁である。

タイトルもあって、宮脇俊三の「時刻表昭和史」のようなものを想像したのだが、切り口はだいぶん異なる。著者は筋金入りの鉄道マニアでもあるようなのだが、現役の政治分野の学者さんであるのだ。

そして内容は案外多岐にわたっている。日本史の教科書に必ず出てくるような人物がいつどの列車に乗って何をしたことによってその後の日本は・・・といった大掛かりな話から、著者自身が若いときに邂逅したローカル線のたたずまいの記憶、といった多分に私的な思い出まで。ばらばら感がないと言えばうそになるが、逆に通読している読者にとっては、自分の知らない方角から見た景色に光を当ててくれるという感覚になるのが嬉しい。

個人的には大船観音の話が興味深かったですね。種村直樹の逸話はきいたことがあったが、それ以外はほぼ初耳で。読みごたえあります。


歴史のダイヤグラム 鉄道に見る日本近現代史 (朝日新書)


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読了:羊たちの沈黙 (The Silence of The Lambs), トマス・ハリス [読書日記]

* 羊たちの沈黙(上) (The Silence of The Lambs), トマス・ハリス, 高見浩, 新潮社, 9784102167083
* 羊たちの沈黙(下) (The Silence of The Lambs), トマス・ハリス, 高見浩, 新潮社, 9784102167090

1980年代に映画化もされたサスペンス・ホラーの古典的名作。
ホラー系は敬遠していたのだが、「東西ミステリベスト100」に載っているのはさすがに読もうと思って入手し、しかし3年以上積読になっていたものをようやく読了。

1988年作品。巻末解説によると4部作シリーズの第2作という扱いらしい。実は事前の予備知識はほぼ映画の予告編のみ。古典の金字塔ゆえ一度はよんどかないとくらいのモチベーションでしたが、途中からドンドコと引き込まれて計8時間ほどで一気に読了。

ただこれ、分類は絶対ミステリィじゃないです。
序盤あたりから超ご都合主義な展開が気になりつつ読んでたのですが、まぐれなラッキーで解決してメデタシメデタシやら、実は〇〇は全てお見通しなのでしたとか最後で興ざめ。
解説にもあるように、あくまでサイコスリラーないしはサスペンスなんだという前提で読まないといけなかったということだ。

ふつうに読んでるだけで、このシーン絶対ハリウッド映像化考えて書いてるよな、とか凄く目について下品かなぁというのも気になるし、あと、古典だからOKなのかもですが、今となってはこんな色眼鏡な人物描写したら特にアメリカじゃ裁判だらけになりそう。大丈夫なんだろうか。

羊たちの沈黙(上) (新潮文庫)


羊たちの沈黙(下) (新潮文庫)


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読了:カササギ殺人事件 (MAGPIE MURDERS), アンソニー・ホロヴィッツ [読書日記]

* カササギ殺人事件(上) (MAGPIE MURDERS), アンソニー・ホロヴィッツ, 山田蘭, 東京創元社, 9784488265076
* カササギ殺人事件(下) (MAGPIE MURDERS), アンソニー・ホロヴィッツ, 山田蘭, 東京創元社, 9784488265083

ホロヴィッツの長編ミステリである。2019年の年末ミステリランキングを総なめしたというベストセラー。上下巻で大部なのを言い訳に1年あまり積読になってたのをこのたびようやく読了。

冒頭から書かれているのでネタバレではないはずだが、本作品は作中にミステリ作家が登場し、その作家が最近ものした長編ミステリ小説がまず語られる、という、いわゆるメタ構造になっているのだ。それ自体をトリックのようにつかう前例があるような気がするが、冒頭で間違えようがない形で断っているので、そのこと自体はトリックではないのだ。だがしかし・・・というところがポイントということだ。

上巻を読み終えたところでまずは茫然自失、そして下巻をひらくと読者は目を剥くという仕掛け。そして物語は全然違う方向へと向かうように見える。(再び)だがしかし・・・というわけである。

作中、クリスティ作品へのオマージュっぽい記述がちらほら出てくるのも、それなりに歳をくった一読者として楽しいのもあり、大部だけれど案外サクサクと読み進められるのもポイント。翻訳が良いのかもしれない。

メタ構造であることがある意味で必然であるという点こそがこの作品の肝になっている、というのがその辺の変わり種ミステリとは一線を画すということなんでしょう。きれいに騙されたとか度肝を抜かれたというよりは、なんというか圧倒されたというのが読了直後の感想であります。
続編もあるらしいですが、いや、いったいどうやってつなげるんだろう。

カササギ殺人事件〈上〉 (創元推理文庫)


カササギ殺人事件〈下〉 (創元推理文庫)


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読了:みかんとひよどり, 近藤史恵 [読書日記]

* みかんとひよどり, 近藤史恵, KADOKAWA, 9784041108932

近藤お得意のグルメ系ミステリ、と思いきや、ミステリかどうかというと微妙な小説です。
帯紙にも「美味しい料理ミステリー!」などと書いてあるが、これミステリーなのかなあ、という感じです。

メインの登場人物は、ジビエ料理にこだわりのあるフレンチの若手シェフと、山裾の小屋に住んで猟師を営んでいる不愛想な男。目次を見ると、ヤマシギのローストだの、若猪のタルトだの、食べたことないけどどうやら旨そうな話に読む前からパブロフ並みによだれが出る。

実際読み進めていくと、(一度も食べたことはないけれど)これでもかという感じの旨そうな描写におなかが鳴ってたまらない。
作中でも触れられているが、結局ジビエは食材が入手できるかどうかが肝になっているわけなので、日本の中途半端な街中では気軽に試すわけにはいかない。勝手に想像を膨らませつつ、どうしても食べたければ都内なのか地方都市がよいのか、その手の店を自分から探しに行かなければということなんでしょう。

さて本書のミステリ的な要素というと、猟師をやっている大高氏の謎めいた過去、というところだろうか。これがまた、人が食べて生きていく因縁というか、昨今の正義押し売りエコーチェンバーというか、うーんと唸らされる重さ。

このテーマを単なる美味しいお話にしてしまわないところが、さすが近藤の力量なんだと思いますね。偉そうに比べるべきではないのかもしれないけれど、個人的には西村京太郎の初期作品は自分は大好きで、もうその域を越えつつあるような、そんな気もする。
シリーズものに限らず、次作も楽しみ。

みかんとひよどり (角川文庫)


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読了:ホッグズ・バックの怪事件 (The Hogs Back Mystery), F.W.クロフツ [読書日記]

* ホッグズ・バックの怪事件 (The Hogs Back Mystery), F.W.クロフツ, 大庭忠男, 東京創元社, 9784488106263

クロフツの長編ミステリである。
1933年の発表で、古典といって間違いはないだろう。

イギリスはロンドンからそう遠くはない片田舎、少しずつ離れて点在する屋敷や家々に癖のある人物たちが住まっていて、という舞台設定。
とある屋敷の主人が謎めいた状況で失踪を遂げる。単純な失踪事件かと思われていたのだが、おなじみフレンチ警部が登場し・・・、という展開で捜査が始まる。これまた例によって捜査は一進一退。フレンチは論理的に可能性をつぶしていくのだが・・・、いやーなかなか手ごわいお話です。

いくつかの僥倖による捜査進展もあるわけですが、最後のほうはなかなか強引な展開(小説がというより、フレンチ警部が)。
とはいえ、謎がとかトリックがとかそういうことではなく、重厚な警察ものミステリを楽しみましょうというお話なのであります。

徹夜で一気読みするよりは、じっくりと時間をかけて読んだほうが楽しめる気がしました。

ホッグズ・バックの怪事件 (創元推理文庫)


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読了:黒い蹉跌 : 鮎川哲也のチェックメイト, 鮎川哲也 [読書日記]

* 黒い蹉跌 : 鮎川哲也のチェックメイト, 鮎川哲也, 光文社, 9784334792312

巨匠・鮎川の倒叙もの短編集である。
かつてテレビドラマの原案となったものを集めたものということである。1978年放送ということなのでさすがにテレビで見てはいないのが残念。

8編を収録。倒叙ものというと、読んでいる側からすると、この犯罪のどこからほころびが・・・というのが面白いところである。
描かれる事件はちょっと時代を感じさせるものも多いのだが、そこは時代が時代ということで、普通に割り引いて読む。これはこれで当時の風俗などがなんだかんだいって楽しい。

・・・なんですが、どうもときどき、結末に鼻白んでしまうことが。

別に犯人が失策を犯したわけでもなく、たまたま偶然が重なってつじつまが合わなくなって・・・という結末はどうなんでしょう。うーん。
読み物としては面白いのですが、ミステリとしてはどうなんでしょう。


黒い蹉跌 (鮎川哲也のチェックメイト)


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