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読了:みかんとひよどり, 近藤史恵 [読書日記]

* みかんとひよどり, 近藤史恵, KADOKAWA, 9784041108932

近藤お得意のグルメ系ミステリ、と思いきや、ミステリかどうかというと微妙な小説です。
帯紙にも「美味しい料理ミステリー!」などと書いてあるが、これミステリーなのかなあ、という感じです。

メインの登場人物は、ジビエ料理にこだわりのあるフレンチの若手シェフと、山裾の小屋に住んで猟師を営んでいる不愛想な男。目次を見ると、ヤマシギのローストだの、若猪のタルトだの、食べたことないけどどうやら旨そうな話に読む前からパブロフ並みによだれが出る。

実際読み進めていくと、(一度も食べたことはないけれど)これでもかという感じの旨そうな描写におなかが鳴ってたまらない。
作中でも触れられているが、結局ジビエは食材が入手できるかどうかが肝になっているわけなので、日本の中途半端な街中では気軽に試すわけにはいかない。勝手に想像を膨らませつつ、どうしても食べたければ都内なのか地方都市がよいのか、その手の店を自分から探しに行かなければということなんでしょう。

さて本書のミステリ的な要素というと、猟師をやっている大高氏の謎めいた過去、というところだろうか。これがまた、人が食べて生きていく因縁というか、昨今の正義押し売りエコーチェンバーというか、うーんと唸らされる重さ。

このテーマを単なる美味しいお話にしてしまわないところが、さすが近藤の力量なんだと思いますね。偉そうに比べるべきではないのかもしれないけれど、個人的には西村京太郎の初期作品は自分は大好きで、もうその域を越えつつあるような、そんな気もする。
シリーズものに限らず、次作も楽しみ。

みかんとひよどり (角川文庫)


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読了:ホッグズ・バックの怪事件 (The Hogs Back Mystery), F.W.クロフツ [読書日記]

* ホッグズ・バックの怪事件 (The Hogs Back Mystery), F.W.クロフツ, 大庭忠男, 東京創元社, 9784488106263

クロフツの長編ミステリである。
1933年の発表で、古典といって間違いはないだろう。

イギリスはロンドンからそう遠くはない片田舎、少しずつ離れて点在する屋敷や家々に癖のある人物たちが住まっていて、という舞台設定。
とある屋敷の主人が謎めいた状況で失踪を遂げる。単純な失踪事件かと思われていたのだが、おなじみフレンチ警部が登場し・・・、という展開で捜査が始まる。これまた例によって捜査は一進一退。フレンチは論理的に可能性をつぶしていくのだが・・・、いやーなかなか手ごわいお話です。

いくつかの僥倖による捜査進展もあるわけですが、最後のほうはなかなか強引な展開(小説がというより、フレンチ警部が)。
とはいえ、謎がとかトリックがとかそういうことではなく、重厚な警察ものミステリを楽しみましょうというお話なのであります。

徹夜で一気読みするよりは、じっくりと時間をかけて読んだほうが楽しめる気がしました。

ホッグズ・バックの怪事件 (創元推理文庫)


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読了:黒い蹉跌 : 鮎川哲也のチェックメイト, 鮎川哲也 [読書日記]

* 黒い蹉跌 : 鮎川哲也のチェックメイト, 鮎川哲也, 光文社, 9784334792312

巨匠・鮎川の倒叙もの短編集である。
かつてテレビドラマの原案となったものを集めたものということである。1978年放送ということなのでさすがにテレビで見てはいないのが残念。

8編を収録。倒叙ものというと、読んでいる側からすると、この犯罪のどこからほころびが・・・というのが面白いところである。
描かれる事件はちょっと時代を感じさせるものも多いのだが、そこは時代が時代ということで、普通に割り引いて読む。これはこれで当時の風俗などがなんだかんだいって楽しい。

・・・なんですが、どうもときどき、結末に鼻白んでしまうことが。

別に犯人が失策を犯したわけでもなく、たまたま偶然が重なってつじつまが合わなくなって・・・という結末はどうなんでしょう。うーん。
読み物としては面白いのですが、ミステリとしてはどうなんでしょう。


黒い蹉跌 (鮎川哲也のチェックメイト)


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