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読了:三体 (Three body problem), 劉慈欣 [読書日記]

* 三体 (Three body problem), 劉慈欣, 大森望、光吉さくら、ワン・チャイ・訳, 早川書房, 9784150124342

中国発、アジア初のヒューゴー賞受賞したSF小説である。
2019年に日本語訳がでて5年越しで文庫化されたので入手したもの。訳監修の大森氏はベイリー作品とかで沢山お世話になってるのもあり。

読んでみての個人的な感想ですが、まあグイグイと最後まで読ませるよくできたエンタメ小説なのは間違いなさそう・・・なんですが・・・3部作の残り2つは自分は読まない可能性大。

良くも悪くもエンタメに振りきっていて、読者の興味を引きそうな今ふうな科学なキーワードや小ネタをこれでもかてんこ盛りにしてる構成。しかしそれら材料がばらばらでうまく連動できてない感が強く、昔のデパート上階の食堂みたいな印象であります。

一方で、最終的に量子もつれまで持ち出してくるわりには、三重星系にも関わらず長期に惑星が存続できてたり、その惑星に安定して構造物を置ける静止軌道が存在してたり、説明一切ないしなんだかな~と。フォンノイマン登場シーン(映像化したら壮観でしょう)でも、いやいやノイマンが発明したのはそこじゃあない!と先ゆきへの期待がだいぶ萎えた。

結局個人的に残念な気分になっているのは、本書は(読む前に自分が勝手になんとなくイメージしていた)「ハードSF」ではなかった、からなのかも。

一つの小説で超科学をいくつも連発されちゃうと、それってSFなの?ファンタジーなの?と思ってしまう。まあヒューゴー賞なのでSFには違いないのでしょうけれど。


三体 (ハヤカワ文庫SF)


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読了:Invert 城塚翡翠倒叙集, 相沢沙呼 [読書日記]

* Invert 城塚翡翠倒叙集, 相沢沙呼, 講談社, 9784065337899

前作「medium 霊媒探偵城塚翡翠」の続編でもある倒叙ミステリ集である。
相沢作品は2冊目の読了。

前作のものすごい結末をもって、いやこれ続編っていったいどうするんだ、というのを倒叙ミステリにすることで著者は華麗に解決。うん、なかなかの手腕です。

念のため倒叙ミステリとは、最初に犯人による犯行が読者に向けて描かれ、のちにそれを探偵がいかに解決するかが主題になっているミステリ小説のこと。解説にもあるが、まあ古くは刑事コロンボ、少し前だと古畑任三郎が代表例。え?「霊媒探偵」なんだから別に解決に苦労はしないはず?(いやいや。笑)

それはともかく、倒叙ミステリを読んでいて「読者への挑戦」が挿入されることになるとは思いもよらず。なかなか今まで作例としてなかったんじゃないかと思うが、どうなんでしょう。

そしてそして、最終話のラストでまた読者は目を剥くことになるのだ。
えー。え~~~。
呆然としながら読み終えて、改めて表紙絵を見る。

う~ん、なるほど…。

またしてもやられました。さらに続編もあるとのことで楽しみです。

invert 城塚翡翠倒叙集 (講談社文庫)


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読了:22世紀の民主主義~選挙はアルゴリズムになり政治家はネコになる~, 成田悠輔 [読書日記]

* 22世紀の民主主義~選挙はアルゴリズムになり政治家はネコになる~, 成田悠輔, SBクリエイティブ, 9784815615604

現代の「民主主義」という仕掛け自体が劣化して破綻している何とかしなくては、という提言の本。

半年以上手元で積読になってたのをようやく読了。
自分の理解が足らないのかもしれないが、本書の主張はざっくり言って、人間が恣意的にやっている政治的判断というものを行う仕掛けを、民衆のビッグデータをもとに最適解を数学的に求めるようにしてしまえ、だという理解をした。

うーんそうですねえ、確かに手段としてわからんでもない。現状の仕掛けが破綻しつつあるっていうのはかなり同意なんで、いわんとしていることはまあ分かる。

ただ、この主張の仕掛けを導入するとなると、「衆愚政治」だとか、果ては「火の鳥 未来編」なんて単語が脳裏をよぎる。内政だけじゃなくて外交にもこれを使うんですよね。ハレルヤ vs ダニューバーみたいな未来は困るよね。

じゃあどうしろって?お前に対案はあるのかって?う~ん…困った。

22世紀の民主主義 選挙はアルゴリズムになり、政治家はネコになる (SB新書)


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読了:謎解き広報課, 天祢涼 [読書日記]

* 謎解き広報課, 天祢涼, 幻冬舎, 9784344426900

女子お仕事ミステリの連作短編集である。天祢作品は初読。
帯紙によると、第18回酒飲み書店員大賞の受賞作らしい。うーん寡聞にして知らない賞です。

ストーリはというと、東京の大学を卒業し、とある地方の町役場に就職した(実はやる気のない)女性が町の広報誌を担当することになり、謎の経歴をもつやり手上司から微妙にいじめられつつ、町じゅうをバタバタ駆けずり回りながらも、町の住民の皆さんの協力も得られ、公務員として広報誌担当として一人の人間として着実に成長を・・・といったオハナシ。

さて、ところどころにミステリ的な味付けのエピソードがあるとはいえ、ストーリのメインは明らかにそこではない。タイトルに「謎解き…」とあるし、確かに謎は解いているけれども、直感と僥倖で決めつける感じの探偵ぶり。それまで伏線も何もないので、読んでいるほうとしてはどうしようもない感が否めない。

あとですね、きっと試されていないんだと思いますが、電圧がかかってない状態のFlashメモリカードは常温の○○○に沈めてもそれだけでは破損しません。水没した電子機器がどういう原理で壊れるのか、ちょっとは考えてみてはどうでしょう。
カードが壊れているっていうのが文系な登場人物たちがそろって陥った誤謬で、後になって実はそれが・・・なんていう伏線かとも期待したのですが、どうやら違うようでしたし。うーん。


謎解き広報課 (幻冬舎文庫)


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読了:刀と傘, 伊吹亜門 [読書日記]

* 刀と傘, 伊吹亜門, 東京創元社, 9784488481216

幕末から明治初頭を舞台にした本格ミステリの連作短編集。
第19回本格ミステリ大賞受賞作である。伊吹作品は初読。

とある書評でこの著者の新作が高評されていて興味を持ち、文庫化されてた2018年発表の作品を入手したという格好。
明治維新前後、慶應3年から明治6年にかけての日本の激動の時代を背景にした本格ミステリという触れ込み。いやいやどうなんだか?などと甘く考えて読み始めて度肝を抜かれました。

この連作短編、単に時代設定をそこに置いただけではない。当時の時代ならではの世間の状況や、市井の人々のものの考え方、政治的画策や立場による確執やらをあぶりだす。そして、それら故の事件への動機、機会、そして犯行の手口へ繋がっていく、という趣向なのだ。なかなか凝っている。

それとですね、ミステリ小説よりサスペンスに振った作品に多いと思うが、登場人物たちにはわかっていない事情や事実を読者は知っている(歴史的事実として知っていたり、著者が予め明らかにしていたり)といった、登場人物と読者との間の情報の非対称性が前面に出ている作品を思い浮かべるとよい。本作はその逆張りともいえるのでは?
例えば「監獄舎の殺人」。探偵役の慧眼によって動機が明らかにされるわけだが、読んだ瞬間の反応は(当方の歴史的知見が浅いからかもだが)、はあっ?!であった。
その後きっちりと背景含め説明が加えられるので読者としてもナルホドと納得するわけだが、現代人の思考回路ではこんな動機はありえないし思いもよらない。
当方、いわゆる理系な人間で教科としての歴史には弱いほう。そうはいっても、明治維新前後の政治的や軍事的なあれこれのごたごたの基礎知識くらいはあるつもり。しかしこんな動機にたどり着くのは到底無理であった。そういう意味でも度肝を抜かれたとしかいいようがない。

いや、ちょっと良いものを読ませてもらいました。
視野が広がるってこういうことか。書評恐るべし。

刀と傘 (創元推理文庫)


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読了:おいしい旅~思い出編~, アミの会/編 [読書日記]

* おいしい旅~思い出編~, アミの会/編, KADOKAWA, 9784041125977

旅先で出会った美味しいもの、をテーマにしたアンソロジーである。アミの会ものは2冊目。
執筆陣を見てグルメミステリのアンソロジだと思い込んで読み始めたのだが、やや謎っぽい話は新津きよみ作品くらい。これも最後にえっ?!と思わせる作品はあるけれど、別に伏線がばりばり張ってあるわけでもなさそうなので、たぶんミステリというカテゴリーではないのだろう。

とはいいつつ、さすがの執筆陣、なかなか読ませます。
前出の新津きよみもラストう~んと唸らされたし、いい人を描かせたら鉄板の大崎梢、そしてやっぱり柴田よしきは驚きとともにちょっと泣かせてくれる。

全7編はいずれも、お話が女子受けを狙ってるなあと感じなくもないのだけれど、まあまあ身近な人の顔を思い浮かべたりしながら、目の前のお話の行方に考えを巡らす、こういうのもちょっと楽しい。ミステリ一辺倒の読書歴を少し方向転換してもよいかなと思えた一冊でしたね。収穫です。


おいしい旅 想い出編 (角川文庫)


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読了:11文字の檻《青崎有吾短編集成》 (Prisoner of Writing), 青崎有吾 [読書日記]

* 11文字の檻《青崎有吾短編集成》 (Prisoner of Writing), 青崎有吾, 東京創元社, 9784488443153

青崎有吾の短編集である。
青崎作品は長編の「○○館の殺人」シリーズを何冊か読んでいるが、連作ものでない短編は初読。

冒頭「加速してゆく」、いや、すごいテーマを持ってきましたよ。これは決してミステリではないし、もちろんドキュメンタリでもない。しかし圧倒されました。
「・・・ガラス屋敷」は純然たる密室殺人もののミステリ(といってよいでしょう)。いやー、これは痺れました。
作者が前書きで言っているように、この後はいろいろなテイストの作品が続き、そして最後が表題作「11文字の檻」。自然と期待が高まります。

導入は謎の状況の説明がちょっと長々と入るものの、中盤からの展開はJPホーガンの初期作品のようなワクワク感満載。ただ主人公が相対するのが自然の法則や犯罪者の思考ではなく、人により作りこみが終わっているアルゴリズム的なもの、というのに職業柄やや鼻白みつつ(因果な商売です…)、楽しく読んでおりました。
それだけに唐突な結末にぼうぜん。え、そんなの分かるわけないじゃん。あれ?もしかして文系の賢い人は一足飛びにここにたどり着けるの?それって常識なの??

うーん。いろんな評者が傑作傑作といっているのに、ぜんぜん膝を打つ感がない。文系科目をさぼっていたのがまずいんでしょうね、つらい。

11文字の檻: 青崎有吾短編集成 (創元推理文庫)


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読了:真夏の日の夢, 静月遠火 [読書日記]

* 真夏の日の夢, 静月遠火, KADOKAWA, 9784048703468

表紙絵がライトノベルっぽいミステリである。静月作品は初読。
帯紙には「ドタバタコメディと思いきや」「複線の数々」「驚きの結末!!」などの煽り文句が躍る。裏表紙を読んで、バイオスフィアみたいな話かなあ、密室殺人ってことかなあ、と思いながら読み始める。文字も大き目だし会話文も多いし、2時間ばかりで読了。

う~~~~~ん。

総じて(ドリフ並みの)ドタバタ劇だし、確かに伏線ぽいものはいくつか。驚きの結末を描いているのもその通り。帯紙はうそを言ってはいない。

ただこれがミステリかっていうとどうなんでしょう。
メインの伏線として引いたと思われるコレは、平成初期ごろ手あかがついた有名なやつだし(そのつもりで読んでるとすぐ分かっちゃう)、終盤で明らかになる大掛かりな「驚き」の話は、ドイルにまで遡る超有名ネタとようするに同じ。

あとはそうですね、とある登場人物についての救急隊発言(上の①と根は同じ)につい噴き出したのが収穫といえば収穫。笑

あ、でも、よく見たらどこにもミステリだなんて書いてないな。
そうか、そういうことか!(カヲ○)

真夏の日の夢 (メディアワークス文庫)


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読了:シュレーディンガーの少女 (Girls in Dystopia), 松崎有理 [読書日記]

* シュレーディンガーの少女 (Girls in Dystopia), 松崎有理, 東京創元社, 9784488745028

SF短編集。松崎作品は初読。
帯紙には、本書のコンセプトは「ディストピア×ガール」です、などとある。『侍女の物語』みたいな作風かと思って読み始めたらちょっと違う。

冒頭「六十五歳デス」。設定自体は「PLAN75」みたいなものか。しかしストーリーはアクション映画である。引き続き、コミカルな皮をかぶったエゲつないスプラッタ描写の娯楽番組ネタやら、思いきりファンタジー小説(いまだと異世界ものとかいうのか)であったり、分岐する宇宙ネタ&ホラー映画なパンデミックものであったり。結局あまりディストピアという感じがしないまま読了。うーむ、なんだったんだろう。

個人的には、中盤に挿入されているショートショートっぽい秋刀魚のお話(2021)がお気に入りであります。いやいやこの作品、いまどき、というより2023年の春に読むと、おそらく今年最大の理系以外も巻き込んでの話題のテックネタ「C**tG*T」とかって、最終的にこういう風に役立てるべきだよね、などと思える未来予想図。楽しかったです。

シュレーディンガーの少女 (創元SF文庫)


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読了:叫びと祈り, 梓崎優 [読書日記]

* 叫びと祈り, 梓崎優, 東京創元社, 9784488432119

ミステリ連作短編集。書店に平積みになっているのをみて気になって購入。
帯紙にもあるが、冒頭収録の「砂漠を走る船の道」は2008年のミステリーズ!新人賞受賞作である。

この作品を皮切りに、主人公(なのだろうか?)の斉木氏が、時に探偵的な、時には狂言回しのような形で、5編のお話が進んでいく。

斉木は日本人らしいのだが、舞台はおおむね異国の地、冒頭作などはサハラ砂漠の真ん中だったりする。ストーリーを読んでいくと、なんとなく前衛的な感覚でもあるし、それでいてやたらと情緒的な印象でもある。「奇妙な味」ともちょっと違う。トリック前面などでは全くなく、どうしてそういう行動に?というあたりがメインの謎。大きくくくればハウダニットになるのだろうか。

とはいえ、ふだん読みつけているミステリとは違う世界に連れて行ってくれるような、何故かそんな読後感。文章のつくりとか、言葉の選び方とか、心象の表現に仕方あたりにそういう感覚を持つのかもしれない。個人的にはこういう作り、好みである。全然分野が違うのですが、紀行作家の故・宮脇俊三の作風に遠いところで類似を感じたりしました。

叫びと祈り (創元推理文庫)


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