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読了:みかんとひよどり, 近藤史恵 [読書日記]

* みかんとひよどり, 近藤史恵, KADOKAWA, 9784041108932

近藤お得意のグルメ系ミステリ、と思いきや、ミステリかどうかというと微妙な小説です。
帯紙にも「美味しい料理ミステリー!」などと書いてあるが、これミステリーなのかなあ、という感じです。

メインの登場人物は、ジビエ料理にこだわりのあるフレンチの若手シェフと、山裾の小屋に住んで猟師を営んでいる不愛想な男。目次を見ると、ヤマシギのローストだの、若猪のタルトだの、食べたことないけどどうやら旨そうな話に読む前からパブロフ並みによだれが出る。

実際読み進めていくと、(一度も食べたことはないけれど)これでもかという感じの旨そうな描写におなかが鳴ってたまらない。
作中でも触れられているが、結局ジビエは食材が入手できるかどうかが肝になっているわけなので、日本の中途半端な街中では気軽に試すわけにはいかない。勝手に想像を膨らませつつ、どうしても食べたければ都内なのか地方都市がよいのか、その手の店を自分から探しに行かなければということなんでしょう。

さて本書のミステリ的な要素というと、猟師をやっている大高氏の謎めいた過去、というところだろうか。これがまた、人が食べて生きていく因縁というか、昨今の正義押し売りエコーチェンバーというか、うーんと唸らされる重さ。

このテーマを単なる美味しいお話にしてしまわないところが、さすが近藤の力量なんだと思いますね。偉そうに比べるべきではないのかもしれないけれど、個人的には西村京太郎の初期作品は自分は大好きで、もうその域を越えつつあるような、そんな気もする。
シリーズものに限らず、次作も楽しみ。

みかんとひよどり (角川文庫)


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