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読了:密室黄金時代の殺人〜雪の館と六つのトリック〜, 鴨崎暖炉 [読書日記]

* 密室黄金時代の殺人〜雪の館と六つのトリック〜, 鴨崎暖炉, 宝島社, 9784299026460

第20回「このミステリーがすごい」大賞受賞の本格ミステリである。本作がデビュー作とのこと。

ウラ表紙にも書いてあるが、とにかく設定が特徴的。
いわゆる「密室殺人」が起きた場合、どうやって犯行が可能だったのか?を証明、つまり密室の謎を破らないと、被告人は無罪になる、というのが数年前から判例となった日本が舞台である。その結果、密室での殺人が成功失敗はともかくやたらと横行しているのだ。

そして本作の舞台は、今はホテルとして使われている山奥の館。登場する10名あまりの人物。なんだかんだあって館が孤立する。そして第一の事件が、というのが発端。連続する密室殺人、そこへ毎回添えられるトランプのカードが実は・・・というわけである。

・・・いやー、面白かったですね。
新人ということで円熟の筆致とかそういう感じではもちろんないのですが、最後に出てくるトリックも盲点的というか現実的に面白いし、そもそも読者に対するサービス精神が旺盛。途中何度も笑ってしまった。

しいて難点を上げるとすれば、いろいろとミステリ小説、最近のライトなやつからベストセラー作家のものまで広く読みつけていないと、いろいろ仕込まれている面白ネタが楽しめない、というところでしょうか。この辺が逆に選考委員にはウケたのかもしれない。(トリックや謎の解明にはこのへん影響しないので、そういう意味では心配ご無用ですが。)


【2022年・第20回「このミステリーがすごい! 大賞」文庫グランプリ受賞作】密室黄金時代の殺人 雪の館と六つのトリック (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)


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読了:おいしい旅 初めて編, 近藤史恵/他 [読書日記]

* おいしい旅 初めて編, 近藤史恵、坂木司、篠田真由美、図子慧、永嶋恵美、松尾由美、松村比呂美, KADOKAWA, 9784041125984

旅と美味しいものをテーマにした短編集である。著者がそうそうたるメンバーなのがすごい。

冒頭は坂木司。いろんな色の作品の人だが、食べ物といったら「和菓子のアン」。そっち系かと思って読んでいたら全然違った。でもなんだかこの登場人物、微妙に自分とウマが合う気がしてしまう。しかも伊東線~伊豆急行線は、実は乗ったことないんですよね。

続いて松尾由美。この人は日常の謎だよねー、ああやっぱり!と思って読んでたら、え、そっちか、という意表。さすが名手。個人的に台湾のこれは、いろんな思い出もあって大好きだというのもある。

そして近藤史恵。さあて、今回はどうひねってくるのか。そういうつもりで読んでいたら、違いました。直球勝負で人の心に響く、そんなストーリであります。そしてこの人の十八番、超うまそうなメシの描写は健在。

こんな感じで最後まで全7編。
いやはや楽しい旅でした。

おいしい旅 初めて編 (角川文庫)


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読了:沈黙のパレード, 東野圭吾 [読書日記]

* 沈黙のパレード, 東野圭吾, 文芸春秋, 9784167917456

ガリレオシリーズの長編。昨年文庫化されてたのを見落としていて、このたび慌てて入手したもの。
前回ガリレオものを読んだのが2015年なので、実に7年ぶりである。

7年前の「禁断の魔術」でも感じたのだが、だんだんガリレオ先生が丸くなってきている気がするのは、やはり直木賞作家たるもの作風が変わるのか、はたまた作者も読者も丸くなったからそう感じるのか。なおその辺は、ちゃんと作品中でも突っ込みが入れられていて、読んでいてつい笑ってしまった。

笑ったといえば、比較的冒頭近く(結末近くでもう一度)、とある古典が唐突に引用される。東野なりにオマージュ元として意識して挿入したのでしょう、ミステリとしての体裁が違うけどねと思いながらもつい含み笑い(いやしかし)。

作品テーマは全体的に、宮部みゆきの向こうを張ったような印象。それでいて、東野らしいラスト数十ページでの読者へのサービスも忘れない。
途中のレッドヘリングも含め、「トリック」の骨子は容易に思いつくんですが、最後のひねりは予想外、しかしさもありなんという結末。そう、あれも実はレッドヘリングだったんですね。うーんさすが。

沈黙のパレード (文春文庫 ひ 13-13)


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