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読了:レイクサイド, 東野圭吾 [読書日記]

* レイクサイド, 東野圭吾, 文芸春秋, 9784167110109

東野圭吾の長編ミステリ。2002年の作品。

冒頭からミステリというよりはサスペンス映画の雰囲気。主人公の並木君が避暑地の別荘地へと一人クルマを走らせるわけだが、怪しい携帯電話のやり取りであるとか、現地に到着するや否や(ぜったい愛人だよな~とバレバレな)女子が現れたりとか、ちょっとまいったなぁという読み始めの印象。

続けて並木君の不道徳?な行動がもろもろ描写されるのだが、この辺りからやや妙な感じになってくる。そして並木君が別荘地に戻ると、驚愕の事態が・・・というオープニングである。いやいやいやおかしいでしょうどうみてもその展開は?!先生~こんなのどうやって収拾するのよ!と思いながら、流れにまかせて読み進めていく。引き続き背徳的な空気を醸し出しながら、微妙につじつまが合わないストーリー。そして突然に明らかになる事件の真相?・・・というところで物語は唐突に幕を下ろす。

う~ん。サスペンスフルなお話でぐいぐいと読ませるという狙いはうまく当たっている感じなのですが、ミステリとしては個人的にはどうかなぁ、と。ちょっと推理というか真相へ到達する過程が強引すぎる印象。驚愕の結末という意味では、アリンガムの某作の二番煎じ的な何かを感じてしまう。映像化を意識?と思ったら、どうも2005年に薬師丸ひろ子ほかによる映画化がされていたようだ(見ていません)。

レイクサイド (文春文庫)


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読了:正義の教室 : 善く生きるための哲学入門, 飲茶 [読書日記]

* 正義の教室 : 善く生きるための哲学入門, 飲茶, ダイヤモンド社, 9784478102572

哲学の入門書である。

とある私立高校の生徒会と、高校の倫理の授業とを舞台にして、正義とは何か?を学ぼうとする生徒4人。それぞれのスタンスが異なり、いったいなにが正義なのかの意見がぶつかり合うのだが、それは人類が2000年の歴史の中ですでに考えに考えてきたことなのだ、という流れ。読者としては、異なる主義主張のぶつかり合いと、後に続く(授業の形をとっての)解説を読むことで、いわゆる哲学のおおまかな歴史と現時点での人類としての考え方、を知ることができるというもの。

大学では哲学や倫理学はあえて受講せず、最近になってサンデル先生の著作なども読んだのだが、どうも理解したとはいいがたい状態で読了してしまった状態。地球環境問題やら技術者倫理にからんで、この状態だとちょっとまずいなあというモチベーションで入門書を手に取ったわけである。

3時間くらいで読了して、おそらく学問としての厳密な哲学では、こんなラフな説明ではNGなのだろうが、専門外の者が参考にするためにざっくりした内容を抑えたい、というのにはよいのでは、と思えた。ステレオタイプな感じのする三者三様の登場人物が、「3種の正義:功利主義、自由主義、直観主義」をそれぞれ(それとは知らずに)強く主張するストーリなので、どういう特徴の正義がどういう優位点と欠点があるのか、が何となくであっても頭に残りやすいのだ。哲学を専攻しようというひとではなく、畑違いの人(たとえばエンジニア)向けの哲学入門書としてはなかなか良いのではないでしょうか。

気候変動問題での意見対立とか、最近の極東での外交衝突とか、正しいって何?の根っこが違うところで議論している(から話がひたすらすれ違う)ということなんじゃないかとも思えてきたのが意外な拾いもの。

ただちょっと個人的には、ミステリ小説的な伏線回収が微妙(面白いのだけれど、ちょっとやりすぎの感)だなぁと思ったのと、(わざとなんでしょうが)エピローグが無理くりっぽくて鼻白んじゃったのが残念。

正義の教室 善く生きるための哲学入門

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読了:いまさら翼といわれても, 米澤穂信 [読書日記]

* いまさら翼といわれても, 米澤穂信, KADOKAWA, 9784041081648

米澤の「古典部」シリーズの短編集である。あとがきに米澤自身がそのようなことを書いているが、これをいきなり読むのは全くお勧めできない。「古典部」シリーズの長編(これまで出ている分)を読んだ後のほうが楽しめるだろう。

内容はというと、おなじみの古典部メンバー4名を主役に据えた短編が6つ並ぶ(サブタイトルのもじり元を考えるのも面白い)。といっても長さはいろいろ。これまでの長編で何度も語られてきた設定やら前提にしてきたことがらについて、その過去と未来について語られる、という趣向である。もちろん謎解き的な楽しみも織り込まれるわけだが、最後まで読み切っての感想は、ミステリとして書かれたというより、「古典部」の世界観を拡張もしくは補完するために書かれたのでは?というもの。まったく見たことはないのだが「古典部」シリーズはアニメ映像化されているはずで、本作は、そちらの方面からのもろもろの要請が成せる業なのかもしれない、と。うがった見方すぎかもしれないが。

まぁそんな裏読みなどせず、おおぉーそういう背景でそういう設定になったわけなのか(涙)、とか、ええぇーそんないきなりちゃぶ台返し(梯子外しともいう)で今後この人はいったいどうなるどうなる?、とか、そういう楽しみ方のほうが本来の姿なのかもしれませんね。

いまさら翼といわれても (角川文庫)


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読了:月輪先生の犯罪捜査学教室, 岡田秀文 [読書日記]

* 月輪先生の犯罪捜査学教室, 岡田秀文, 光文社, 9784334778866

明治時代の東京を舞台にしたシリーズもの連作短編集である。
これまでのシリーズで月輪(がちりん)探偵&語り手たるワトソン役という作りだったが、本作はワトソン役不在。その代わり、月輪先生の講義を受講している帝大生3名が、実習の名のもとにそれぞれ推理を繰り広げるという趣向である。

学生による推理が提示されてはそれが合理的な理由で却下されるというのを繰り返し、最終的には月輪が真相を暴くという形自体は本作を通じて基本的に共通。読者としては、読みすすめていく途中から水戸黄門ばりの様式美なのかと思い始める始末である。

ミステリの話としては(部隊たる時代性がそうさせるのかもしれないが)、どちらかというと緻密なトリックというよりはあっと驚くストーリーテリング。もちろんこれはこれで面白く(特に短編であるので)、その時代だからこその事情や錯誤やらも巧みに取り入れているあたりはさすが、と思えた。

気軽に肩の力を抜いて読むのがよさそうである。

月輪先生の犯罪捜査学教室 (光文社文庫)


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