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読了:火星の遺跡 (Martian Knightlife), ジェイムズ・P・ホーガン [読書日記]

* 火星の遺跡 (Martian Knightlife), ジェイムズ・P・ホーガン, 内田昌之, 東京創元社, 9784488663278

ハードSFの巨匠、故・ホーガンの2001年の作品。
舞台は近未来の火星。人類は小惑星帯あたりまで活動領域を広げている。地球はすでに革新技術が生まれる場所ではなくなっており、いまは火星がその役割を担い、今日も新しいスタートアップが人間瞬間移動技術を開発して・・・というイントロダクションである。

ホーガンの初期の作品をイメージして、このテレポーテーション装置がお話の中でどういうふうに化けるのか?という興味で読み進めると、しかしその期待は裏切られる(ここまではネタバレではないでしょう)。この時点で、ううーん、ちょっと個人的にはかなり残念な印象をうけてしまった。

さて本書は2部構成になっていて、瞬間移動機の話はおおむね1部で幕を引く。そして第2部では舞台を火星の地下に眠る巨大遺跡にうつし、南米の巨石遺跡との関連性に関する長々とした話、遺跡をからめた主人公と悪人との掛けあいや騙しあい、そして手に汗を握るアクション。もちろん、第2部にも重要な役回りを演じる別の超・技術が登場したりするのだが、少なくとも第2部は、(自分がホーガン作品のファンであることを割り引いても)これってハードSFではなくてスペースオペラなんじゃ?というのが偽らざる感想である。場面場面がご都合主義なのはあるていど仕方ないとしても、人物造形にジェームズ・ボンドの影がちらつくような気がするのもいただけない。

いや、これがそもそもホーガンの作品じゃなかったりとか、1980年代のSFだったりとか、少なくとも帯紙に「[星を継ぐもの』著者円熟期の傑作登場」なんて派手なコピーが躍っていなかったなら、そんなにがっくりはしなかったような気もするのです、が。

火星の遺跡 (創元SF文庫)


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読了:世界を変えた6つの「気晴らし」の物語~新・人類進化史~ (Wonderland - How Play Made the Modern World), スティーブン・ジョンソン [読書日記]

* 世界を変えた6つの「気晴らし」の物語~新・人類進化史~ (Wonderland - How Play Made the Modern World), スティーブン・ジョンソン, 大田直子, 朝日新聞出版, 9784023316324

人類の技術史のものがたりである。前著「世界をつくった6つの革命の物語~新・人類進化史~」がかなり面白かったもあり、表紙を見ただけで購入。

前著に対し本書は、人類が直面してきた「楽しみ」(おそらく原書では wonder なのか?)に焦点をおいている。例えば、自動機械。もちろん聖水の自動販売機のような実用的な機械もそうなのだが、本書で取扱うのは人形がひとりでに動いたりする仕掛けが重点。これにファッションやら、商売そのものやら、味覚の追及、純粋に遊ぶためのゲーム、などなど。ときおり翻訳本ならではの読みづらさが表面化したりもするのだが、全編通じてへぇ~と思わされる内容が多くて楽しい読書体験でありました。

もっとも前著に比べると、扱っているテーマもあいまって全体に緩いお話になってしまう(もしくはそのように読めてしまう)のは否めない気がする。これは逆の見方をすると、前著はそうとうの驚きをもって受け止められた、の裏返しなのかもしれませんけれどね。


世界を変えた6つの「気晴らし」の物語【新・人類進化史】


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