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読了:人間のように泣いたのか? (Did She Cry Humanly?), 森博嗣 [読書日記]

* 人間のように泣いたのか? (Did She Cry Humanly?), 森博嗣, 講談社, 9784065135945

森博嗣のWシリーズ第10弾にして完結編である。
人工知能と人工生命が人類とどう共存することになるのかの解が示される・・・のかなぁとぼんやり想像しながら読み始めた。

ものがたりは学会の実行委員を担うことになったハギリ博士のぼやきから始まる。このあたりなかなか笑えます。S&Mシリーズでも学内の委員会に時間を取られてぼやく犀川先生とか、Gシリーズでも伊豆で開催される全国大会を心の中でこき下ろすシーンとか、この手のシチュエーションでの辛辣さは元祖「理系ミステリ」ならでは(笑)。

そのまま話が進むのかと思いきや、一気に事態は緊迫し、そしてWシリーズらしいともいえるドンパチ開始。ハリウッド映画か香港映画もかくやと言わんばかりの場面展開と派手なアクション。いつものネットワークバックアップを得られないための苦戦は、しかしちょっと微妙な効果をもたらすのである。最終章には期待通り真打が登場するものの詳細は語られず、エピローグでは本作のメインテーマも絡めたと思しき意味深な描写。

大団円というには程遠く、いや森先生まだまだ引っ張りますね、というところかと。
でもそれはそれで楽しみではあります。

人間のように泣いたのか? Did She Cry Humanly? (講談社タイガ)


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読了:さよならブルートレイン: 寝台列車ミステリー傑作選, 鮎川哲也、他 [読書日記]

* さよならブルートレイン: 寝台列車ミステリー傑作選, 鮎川哲也、他, 光文社, 9784334769840

寝台列車を舞台にした短編を集めた作品集。
最後のブルートレイン「北斗星」が廃止となった2015年に編まれたもの。収録作品は次の8編。
 急行出雲、殺意の接点、新婚特急の死神、ブルートレイン殺人号、ダブルライン、亡霊航路、殺人は食堂車で、夜汽車の記憶

この中でも鮎川哲也の名作「急行出雲」はもちろん読了済み、西村京太郎の「殺人は食堂車で」も同様なのだが、ほかは読んだことがないなぁということで手に取った。「急行出雲」が収録されている時点で必ずしも舞台は「ブルートレイン」ではない(ブルートレインという名称は20系客車以降のものであって、寝台列車全般を示すものではないので)わけだが、まあ細かいことは置いておきましょう。

ページを繰ってみると、作家ごとに特徴があってなかなか面白い。
森村誠一作品「殺意の接点」は明らかな作為をどうつぶすかというところが焦点なわけなのだが「ブルートレイン」だったら実行不能なトリッキーな話になっていてちょっとえ~と思ったり、トリックを思いついたから書いてみました系の作品も目についたりして少々鼻白んだり。

鉄道ものミステリというと、どうしても作品を多数読んでいる鮎川が基準になってしまうのでそのあたりは少々割り引く必要があるのだが、それにしても作家ごとに視点がこんなに違うのだなぁというのを実感した次第である。なかなかこういうアンソロジーも面白いものですね。


さよならブルートレイン: 寝台列車ミステリー傑作選 (光文社文庫)


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