読了:シャーロック・ホームズの蒐集, 北原尚彦 [読書日記]
* シャーロック・ホームズの蒐集, 北原尚彦, 東京創元社, 9784488479114
シャーロックホームズもののパスティーシュ作品6編を収めた短編集である。北原氏は有名なホームズマニアとのこと。
本書に収められているパスティーシュは、ドイルが書いたホームズ作品中で名前だけ触れられている「語られざる」事件のものがたりを、ドイル風に作風を工夫しながらミステリに仕立てる、という趣向のもの。あとがきにもあるが、これはなかなか書くのが大変であろう。自分はさしてホームズマニアというわけではないが、ドイル作品はいちおう全作を読んでいるし、各種パロディやパスティーシュも十数冊保有しているというレベルではある。
さて中身であるが、なかなか面白い。うまいことドイル風に味付けされた文章表現やストーリ展開、ドイルばりのホームズ超人描写や、いまではNGの推理の飛躍など、当時の雰囲気をこれでもかというふうに盛り込んでいる様子。
個人的にはもうちょっと口語文(特にワトスンのせりふ)を固めの表現に徹してもらったほうが、さらに雰囲気が出るよなぁとも思ったが、これは自分が新潮文庫の延原訳でホームズものに触れた世代ゆえか。
まあそのような細かいところを気にしたりせず、ストーリ展開とホームズ推理の飛躍を目の当たりにして楽しむ、のがよいような気がしますね。
シャーロックホームズもののパスティーシュ作品6編を収めた短編集である。北原氏は有名なホームズマニアとのこと。
本書に収められているパスティーシュは、ドイルが書いたホームズ作品中で名前だけ触れられている「語られざる」事件のものがたりを、ドイル風に作風を工夫しながらミステリに仕立てる、という趣向のもの。あとがきにもあるが、これはなかなか書くのが大変であろう。自分はさしてホームズマニアというわけではないが、ドイル作品はいちおう全作を読んでいるし、各種パロディやパスティーシュも十数冊保有しているというレベルではある。
さて中身であるが、なかなか面白い。うまいことドイル風に味付けされた文章表現やストーリ展開、ドイルばりのホームズ超人描写や、いまではNGの推理の飛躍など、当時の雰囲気をこれでもかというふうに盛り込んでいる様子。
個人的にはもうちょっと口語文(特にワトスンのせりふ)を固めの表現に徹してもらったほうが、さらに雰囲気が出るよなぁとも思ったが、これは自分が新潮文庫の延原訳でホームズものに触れた世代ゆえか。
まあそのような細かいところを気にしたりせず、ストーリ展開とホームズ推理の飛躍を目の当たりにして楽しむ、のがよいような気がしますね。
読了:最悪の事故が起こるまで人は何をしていたのか (Inviting Disaster - Lessons from the Edge of Technology), ジェームズ・R・チャイルズ [読書日記]
* 最悪の事故が起こるまで人は何をしていたのか (Inviting Disaster - Lessons from the Edge of Technology), ジェームズ・R・チャイルズ, 高橋健次, 草思社, 9784794222930
現代において発生した巨大事故例を取り上げて、その発生にいたるまでの要因分析を行おうというドキュメンタリ本。文庫で500ページ超となかなか大部である。かつて柳田邦夫の「マッハの恐怖」シリーズを愛読した者としては、こういう本にはついつい手が伸びる。
本書では、事故と言っても純粋な自然災害は原則として含まれていない。人間が設計、運用している装置なり施設がなんらかのトラブル(それは自然環境が要因の一つとして影響している場合もある)を引き起こし、それをマイナートラブルで食い止めることができずに大事故に至ってしまった、という事例が取り上げられているのだ。
原書がかかれたのは2001年。取り上げられている事例には、有名だが古い時代のもの(例えば、三菱長崎のタービン飛散、米国リバティ号沈没、など)は意図的にか排除されていて、あくまで現代に起きている事故に絞られている。まずは、洋上石油掘削基地の転覆、続いてスリーマイル島事故、チャレンジャー号打ち上げ失敗といったところだ。(2001年著作ゆえ、2011年の日本の原子力発電事故は載っていない。)
いずれの事例紹介でも、学術的な解説というより、臨場感あふれるストーリ描写という感じになっているので、まあ良い意味でも悪い意味でもハラハラドキドキしながら読み進められるようになっているのが特徴。これ知っているよという事例もいくつかあるけれども、これだけの分量を通して読むことで全体感を把握できるともいえるだろう。
ちょっとだけ苦言をあげるならば、本書は最終章が全体のまとめになっているのだが、全体のお話に対してまとめの分量が少な目で、事例の一般化が中途半端に終わってしまっている印象である。ページの割合的に、事故事例のストーリ集みたいになってしまっている感。
また、事故事例の中で類似の例を挙げたいがために、メインのストーリの途中で時々脇道にそれることがあるのだが、これが毎回毎回唐突感があって、一瞬はなしについていけなくなる。翻訳の問題なのかもしれないが、集中をそがれるのでちょっとどうにかならないかと思ったところだ。
現代において発生した巨大事故例を取り上げて、その発生にいたるまでの要因分析を行おうというドキュメンタリ本。文庫で500ページ超となかなか大部である。かつて柳田邦夫の「マッハの恐怖」シリーズを愛読した者としては、こういう本にはついつい手が伸びる。
本書では、事故と言っても純粋な自然災害は原則として含まれていない。人間が設計、運用している装置なり施設がなんらかのトラブル(それは自然環境が要因の一つとして影響している場合もある)を引き起こし、それをマイナートラブルで食い止めることができずに大事故に至ってしまった、という事例が取り上げられているのだ。
原書がかかれたのは2001年。取り上げられている事例には、有名だが古い時代のもの(例えば、三菱長崎のタービン飛散、米国リバティ号沈没、など)は意図的にか排除されていて、あくまで現代に起きている事故に絞られている。まずは、洋上石油掘削基地の転覆、続いてスリーマイル島事故、チャレンジャー号打ち上げ失敗といったところだ。(2001年著作ゆえ、2011年の日本の原子力発電事故は載っていない。)
いずれの事例紹介でも、学術的な解説というより、臨場感あふれるストーリ描写という感じになっているので、まあ良い意味でも悪い意味でもハラハラドキドキしながら読み進められるようになっているのが特徴。これ知っているよという事例もいくつかあるけれども、これだけの分量を通して読むことで全体感を把握できるともいえるだろう。
ちょっとだけ苦言をあげるならば、本書は最終章が全体のまとめになっているのだが、全体のお話に対してまとめの分量が少な目で、事例の一般化が中途半端に終わってしまっている印象である。ページの割合的に、事故事例のストーリ集みたいになってしまっている感。
また、事故事例の中で類似の例を挙げたいがために、メインのストーリの途中で時々脇道にそれることがあるのだが、これが毎回毎回唐突感があって、一瞬はなしについていけなくなる。翻訳の問題なのかもしれないが、集中をそがれるのでちょっとどうにかならないかと思ったところだ。