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読了:臨床探偵と消えた脳病変, 浅ノ宮遼 [読書日記]

* 臨床探偵と消えた脳病変, 浅ノ宮遼, 東京創元社, 9784488411213

現代の医療現場を舞台にしたミステリ小説。著者の浅ノ宮氏は現役のお医者さんとのこと。
ストーリーの骨子はおおむね医療現場、不可解な症状を呈する患者を前にして悩む担当医師たちと、その症状に潜む真実を簡潔に鋭く指摘する西丸医師、というのが定型フォーマットの短編集である。

いわゆる本格ミステリではないし、フィクションとはいえ人の生き死にが関わっているの「日常の謎」というくくりでもない。専門的な医療用語が(丁寧な解説付きとはいえ)ばんばん出てくるのもあって多少とっつきにくい感はあるかもしれないが、法医学もののミステリや、医療ものに限らず論理で詰めていく話が好きな人には向いていると思う。

個人的には、各話とも紙数のほとんどは上述の「悩む担当医師」の独白などに割かれていて、満を持して西丸医師が登場するのは少しだけ、というのがちょっと好みの構成だ。ついでにいうならば、西丸ドクターが真実を指摘してめでたしめでたしだけで終わらないところにも著者の深みを感じたりも。

特に表題作など、謎の提示が終盤に近付いたあたりで、あぁもしかしてそういう錯誤が?、というあたりまでは読者として気づいたわけですが、その指摘とともに深く掘り下げられる背景描写が何とも言えずずしんとくる。

万人向けではないかもですが、ひとりの人間としての医療従事者に少しでも思いをはせることができるかもしれない、そういう意味でちょっと時節柄にも良かったかもしれない、などと思える読後感でした。

臨床探偵と消えた脳病変 (創元推理文庫)


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読了:濱地健三郎の霊なる事件簿, 有栖川有栖 [読書日記]

* 濱地健三郎の霊なる事件簿, 有栖川有栖, KADOKAWA, 9784041083222

有栖川の新探偵シリーズである。これがなんと「心霊探偵」。
いったいどうなることやらと思いながら読み進めるわけだが、いや、存外に面白い。
いわゆる「本格」になりえないのは仕方ないとして、心霊が見えるからといって論理をすっとばしているわけではない、というあたりがポイントなのかもしれない。世の中の前提をちょっと変えてみた舞台、というところかしらん。少し前に読んだ「〇〇荘の殺人」の立ち位置とも似ているような気がした。

主人公たる濱地氏もなかなかの食わせ物だが、助手をにんずるユリエ嬢もちょっとどうして一癖ある感じ。不思議な力の助けを借りて、向かい合うのは哀しい人間の心、というところだろうか。少なくともこれはホラーではないし、決してオカルト小説でもない。何ともいえない読後感でありました。

濱地健三郎の霊なる事件簿 (角川文庫)


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