SSブログ

読了:青鉛筆の女 (Woman with a Blue Pencil), ゴードン・マカルパイン [読書日記]

* 青鉛筆の女 (Woman with a Blue Pencil), ゴードン・マカルパイン, 古賀弥生, 東京創元社, 9784488256098

帯紙には「三重構造の超絶技巧ミステリ!」などという売り文句が躍る。2015年発表の米国ミステリである。マカルパイン作品は初読。

三重構造というのは、(1)1945年刊行のパルプ・スリラー、(2)編集者(欧米の編集者は原稿に青鉛筆でコメントを書き込むらしい)からの手紙、(3)手書きの原稿の束、のことで、これらが順繰りに読者に提示されていくことを指している。

冒頭、ハンフリーボガード主演「マルタの鷹」が上映されている映画館で物語の幕は上がる(個人的に最近同作を文庫で読んだばかりで、おおぉと思った)。読み進めていくと、これら(1)~(3)の3つはどうやら互いに関連性があるらしいことがわかってくるのだが、なぜそういう自体になっているのかは謎のまま。(1)と(2)が相互に干渉していることはうすうすわかってくる。(3)はなんだかSF仕立てのような気もしてくる。ちょっとご都合主義な展開とか何だかなぁと思いながらも読み進めていくと、ところどころにおやっと思う微妙な記述。前のほうで出てきたアレに関係しているのか?と。謎はしかし綺麗な解決を提示されることなく強引に本編は終了、後日談が語られて全ては終わってしまうのだ。

やや不完全燃焼な気持ちで解説を読み始めて、瞠目。わたし日本人ですが、第二次大戦中に米国の日系人が直面した厳しい状況については殆ど無知で(『バンクーバーの朝日』は映画館で見たけれど)、それゆえ読後感が不完全燃焼だったことが分かるのだ。歴史的事実をいろいろ後付けで(webで)調べていくうちに、著者が仕掛けていた伏線に気付くこと気づくこと。ううーんこれが帯紙の三重構造だったのか、青鉛筆女史の言動もそれを踏まえると意味あいが違ってくるし、表紙もそういう意味・・・色々な意味で無念・・・。初期の西村京太郎ミステリにも通じる何か。
くやしいので再読するか。

青鉛筆の女 (創元推理文庫)


nice!(2)  コメント(0) 
共通テーマ:

nice! 2

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。