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読了:鉄道ルート形成史―もう一つの坂の上の雲, 高松良晴 [読書日記]

* 鉄道ルート形成史―もう一つの坂の上の雲, 高松良晴, 日刊工業新聞社, 9784526067143

明治初頭の鉄道敷設黎明期から、近年の新幹線敷設に至るまで、鉄道敷設ルートの選定にかかわる史実と工事記録を中心にまとめたものである。かなり趣味色の濃い内容といえる。

本書は前半第1章「都市間交通」と、後半第2章「都市鉄道」の2編からなる。

第1章の冒頭部分は主に明治から昭和にかけての歴史的な記述が主体となる。新橋~横浜の敷設工事のいきさつから始まり、歴史的にも有名な東海道線vs中山道線の話、そして東京駅周辺の鉄道網の形成されていった経緯などが語られる。かなりの量の史料にあたったと思われる詳細な記述が特徴。
そして後半4/5くらいは、新幹線の話が中心となる。まずは戦前の弾丸列車計画から、東海道新幹線、山陽新幹線、東北・上越と続き、それぞれの路線ルートにまつわる話と、特にトンネル掘削工事まわりの詳細なドキュメンタリ風の記述が続く。特に上越新幹線以降は、トンネルの難工事の話がひたすら続く。このあたりで、著者の興味の中心は歴史というより工事史なのでは、と思って巻末をみたところ、旧・国鉄で敷設工事設計を担当されていたとのことで、本人の経験による部分はどうしても厚くなっているということのようだ。

さて第2章、私鉄も含めた都市交通の話である。
都心の馬車鉄道の時代から始まり、大戦を経て「東京五方面作戦」という展開。羽沢貨物線の住民運動の話や、鉄道貨物の衰退(に伴う貨物路線転換)の話など、近代日本工業史の一端をみるようで、これはなかなか面白い。中央線快速電車が複々線なのに中野~三鷹の全駅にとまる経緯とか、SM分離での東戸塚駅開業時の周囲の状況とか(これは個人的にも小学生くらいの時に見ています)、うんちく的な話も多数。この第2章もかなりの分量の資料を引いているようで、よみごたえのある内容になっている。

というわけで、全体としてかなりの労作である。巻末にリファレンスもあり、ここからたどれる資料も多いはずだ。

鉄道ルート形成史―もう一つの坂の上の雲 (B&Tブックス)


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