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読了:動く人工島 (L Ile A Helice) ジュール・ヴェルヌ [読書日記]

* 動く人工島 (L Ile A Helice), ジュール・ヴェルヌ, 三輪秀彦, 東京創元社, 4488517056

ヴェルヌ晩年の風刺に富んだSF作品。1万人の住民を擁する鋼鉄製で航行可能な「島」の、太平洋をまたぐ航海の様子をつづるかたちになっている。

例によってヴェルヌの作品に特徴的な、荒唐無稽の科学技術の成果!といった設定から始まり、語り部として登場するフランス人の主人公たち、敵対勢力として描かれるイギリス人たち、未開の世界での珍しい風習、主人公たちが巻き込まれる危機一髪の冒険、などなど。ほんとうにヴェルヌらしい作品という感じだ。

人工島がどのように作られ、どのように運行されているか、といったところが特に詳しく描かれていたり、美味しい食事や飲み物がふんだんに供されたり、芸術が非常に高く評価されたりするあたりも、ヴェルヌらしくてとても微笑ましい。一方で、南太平洋の島々をめぐるあたりの描写がやや間延びした感じがするのは、読んでいる側にその地域に土地勘がないせいかもしれない。(地図が添付されているので、なんとか救いにはなったが)

中盤から少しずつ予告されている大波乱とは別に、「島」に内在する問題が表面化したことによって結局は破局に至るというストーリ展開は含蓄のあるもので読み応えがある。ハッピーエンドのようで、決してそうではないということなのであろう。現代の人間社会に対する風刺、という理解で良いだろう。

技術的には1895年の執筆ということで、20世紀の世界にしてはいろいろな齟齬があるのだが、そのあたりはヴェルヌに免じて目をつぶって楽しむのがよいでしょう。

動く人工島 (創元SF文庫)


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