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読了:ヒポクラテスの憂鬱, 中山七里 [読書日記]

* ヒポクラテスの憂鬱, 中山七里, 祥伝社, 9784396345310

法医学系のミステリ小説である。昨年文庫が出た「ヒポクラテスの誓い」に続く第2弾。
登場人物は、前作に引き続きエキセントリック(笑)な面々である。猪突猛進系(自分では常識人だと思っている)主人公の若手女医、それに輪をかけて直情型の県警刑事、腕はいいが興味が常識はずれな米国人のドクター、それに法医学界の重鎮なのに物言いがとんでもない教授の先生。

目次を見たときに各章のサブタイトルが東野圭吾調なのにちょっと鼻白んだものの、読み始めてみれば、各話ごとに深くて仄暗い事件の背景が暴かれていく過程が興味深い。もっとも、ストーリーは前作よりさらにドラマ仕立てな印象だ。良くも悪くも話の展開が水戸黄門調だからだろうか、ある意味、安心して読んでいられる、ともいえる。

読み進めながらちょっと唸ったのは、ストーリーとして必ずしもハッピーエンドやら勧善懲悪になっていないところ。隠されていた悪事は暴かれましたけどでもこの女子もだいぶ真っ黒じゃん、とか、この女が主犯ぽいけど、兄ちゃんもたいがいだよな、とか。読者としては章末ごとが重たい。

薄ーく微妙に引いておいた伏線を最終章でばっちり回収するミステリ構成も健在。いや、これは全然予想できない嬉しい楽しい誤算です。一冊通しての犯人像というのは実は最初から読者もぼんやりイメージできるわけですが、その背景にある動機というのがあまりに現代的というか社会的というか先進国的というか。最後までう~~んと唸らされ、楽しめました。

やや蛇足ですが一点だけ、そっち系の技術者として苦言。
高圧送電線の下にしばらく身を置いたくらいで〇〇〇が調子悪くなる、なんていう(ように読者が誤解して読んでしまう)デマを流すのはどうなんでしょうね~。もしそんな高圧線があったとすると、存在自体が法令違反なので即時撤去しないといけない代物。地の文じゃなくて登場人物がそう発言したという形式ではありますが、本書は法医学者(医科歯科大の上村公一先生)の監修を受けたはずで、この先生、大丈夫なのかしらん?(もしかして・・・死んだあとの部分だけ監修したということか。法医学者だけに。)

ヒポクラテスの憂鬱 (祥伝社文庫)


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